デュタステリドは男性型脱毛症の治療薬ですが、この薬の半減期はどうなっているのでしょうか。ところで、半減期というのはこの薬を服用して体内に吸収された後に、血清中薬物濃度が半分にまで減少する時間のことです。どうしてこのような時間を問題にするのかというと、いくつかの意味があるのですが、一つにはこの時間、薬の血中濃度が半分に減るまでの時間が長いほど、その薬は長時間体内に留まることが分かります。逆に短いと、その薬は急速に体外に排泄されてしまうことが分かります。つまり、ある程度は長いほうが、薬としての効き目がより期待できることが分かります。極端な話し、ものの数分で血中の濃度が半分になってしまうような薬があったとしますと、そういう薬は例えば1日3回経口投与しても、なかなか安定した効果を発揮しにくいと考えられます。もしそんな薬を有効に使いたいと考えるのであれば、例えば患者を入院させて点滴投与によって持続的に投与することを考えなければならないかもしれません。
一方で、ではこの薬が半分に減るまでの時間は長ければ長いほどよいかというと、多くの場合はそうですが、やはり程度ものということも言えます。これまた極端な話し、半分に減るまでの時間が例えば1年などという薬があったとしますと、薬の服用を辞めても血中には極めて長期間残り続けることになります。万一何かの副作用が発生して、薬の服用を辞めても体内には長期間残るので、薬の影響を排除するのが極めて難しくなるわけです。もう一つの意味合いは、基本的には同じ薬であればこの半分に減るまでの時間というのは同じであることです。もちろん個人差などいうものはありますし、ヒトの体は機械ではありませんからいくらでも例外的な事例はあるのですが、基本的には同じ値をとります。要は、ある薬の血中濃度が例えばある時点で100mg/mLであったとして、これが半分の50mg/mLになるまでの時間が例えば10時間であったとしますと、ここから25mg/mLになるまでの時間も同じく10時間、25mg/mLから12.5mg/mLになるまでの時間もやはり同じく10時間となるのが基本で、同じ薬なら同じ値を取ることが知られているために、他の薬との間で比較ができるわけです。
さて、ではデュタステリドの半減期ですが、これは添付文書を読めば一応は書かれています。ただし、初めて添付文書を読むような人、あまり馴染みのないような人には難しいかもしれません。それによると、この薬の0.5mgを1日1回、6ヶ月間にわたって投与したときのt1/2は3.4±1.2週間であったと書かれています。t1/2というのがこの血中濃度が半分になるまでの時間のことで、tはtimeのこと、1/2とはそのまま半分という意味です。つまり、人によってばらつきはあるものの、2.2週間から4.6週間かけて血中の濃度が半分になりましたということです。半月から1ヵ月程度かかるということで、これは一般論で話しますと、結構長い期間になっています。多くの薬は週とか月の単位ではなく、時間とかせいぜい日の単位となっていることが多いためです。この期間は同じ男性型脱毛症の治療薬であるプロペシアよりも長く、それだけ効き目が持続するということでもありますが、逆に言うと体内に残りやすい、蓄積しやすいということでもあります。
これだけ長いと、素人が自己判断で服用するのは十分に安全とはなかなか言えません。しっかりと医師の診察を受け、場合によっては検査もしてもらい、何か問題となる副作用が生じていないかどうかを慎重に見極めながら使用したほうがよいことは間違いないでしょう。